和田 有史

RARAアソシエイトフェロー

食の多感覚知覚研究による食体験の拡張

食の多感覚知覚研究による食体験の拡張

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FELLOW PROFILE

2002年日本大学大学院 文学研究科 心理学専攻 修了。 博士(心理学)。
国立研究開発法人 農業食品産業技術総合研究機構 上級研究員などを経て、2018年より立命館大学 食マネジメント学部 教授(現職)。

「美味しい」のメカニズムの解明を通じて、ウェルビーイングに貢献する

人間の多感覚情報統合や食行動を探求し、心理学と関係諸科学の知見を結集した新たな食認知科学を構築することをテーマとしています。多感覚統合メカニズムに加え、リスク認知や価値観など、食のイメージの形成要因を解明することを通じて、これらの知見を応用・展開し、新たなコミュニケーション技法、感性・官能評価技法、情報伝達技法を発信する食の総合科学研究拠点を創生することを目指します。

 

食の認識や食行動は感覚・知覚だけではなく、嗜好の個人差の影響を強く受けています。それはまるでマジックのようにおもしろいものです。例えば、イナゴの佃煮のような昆虫食は、嗜好性が高い人からは美味しそうに見えるが、そうではない人にとっては嫌悪感情を抱き、食品にすら見えません。共通の知覚メカニズムを通して全く異なる印象を形成するメカニズムには、人間の心を総合的に理解する手がかりが潜んでいることでしょう。

 

従来の食品や化学感覚の研究パラダイムでは着手されていなかった、呼吸と味嗅覚の相互作用や風味の視覚化の可能性を明らかにし、それらを利用した応用技術を開発したいと考えています。また、食品の価値観やリスクの認識を明らかにするメカニズムを解明することを目標にしています。これらの知見を通して、人間の心の側面から食に関わるSDGsやウェルビーイングに貢献することを目指しています。

 

今後、五感の相互作用について、感覚デバイスを利用した心理物理学的研究を中心に検討を進めていきたいと考えています。プラントベースト食品については、食品メーカーと協力して、その感覚特性の検討や高付加価値化戦略の開発を行っていきます。また、乳児期からの生育環境や、成人らの食品についてのイメージなどについても認知科学的な調査・研究・教材開発を行うことを考えています。

 

食品の高付加価値化と食糧確保の両者を実現するために人間の知覚メカニズムや消費者認知にフォーカスされることが増えています。これらのニーズを満たすためには、食品分野と認知科学を統合した新たな食認知科学を構築し、それに対応する教育・研究を行うことが有効だと考えています。立命館大学が目指す「次世代研究大学」の実現においては、社会ニーズを実感している幅広い人材を受入れ、産学の一体化した教学・研究が求められると考えているからです。

 

―― パートナーシップについて

 

実空間のみならずバーチャルリアリティやメタバースにおける心理的な効果の測定などを志向している情報工学系の産学の機関と連携し、新たな食体験を創出したいと考えています。また、新食品を開発する食品メーカーや、リスクコミュニケーションなど社会と科学のコミュニケーションを実装したい産官学の機関と連携し、高付加価値化や新技術の受容に関連する試みを行っていきたいと思います。

 

―― 研究連携で大切にしていること

 

連携においては、お互いの関心を理解し、両者と社会にとっての利点を明確にすることを大切にしていきたいと思っています。

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