小林洋一 

RARAアソシエイトフェロー

難分解性化学物質を循環資源に変える温和な光化学反応の実現

難分解性化学物質を循環資源に変える温和な光化学反応の実現

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FELLOW PROFILE

2007年 関西学院大学理工学部卒業、2009年同大学大学院理工学研究科化学専攻博士課程後期課程修了(早期)。博士(理学)。
トロント大学JSPS海外特別研究員、青山学院大学理工学部助教を経て、2017年より立命館大学生命科学部准教授(現職)。
2022年より現在に至るまで、JST さきがけ研究者「持続可能な材料設計に向けた確実な結合とやさしい分解」領域を兼任。

持続可能な循環型社会のために、フッ素化合物の温和な分解・リサイクル技術を開発する

私の研究テーマは、太陽光などの再生可能エネルギーを用いてテフロンなどに代表される極めて安定なフッ素化合物を資源循環可能な原材料にまで温和に分解できる新しい材料や技術を創出することです。フッ素化合物は冷媒、樹脂、表面処理剤、医薬品など、我々の豊かな生活を支える必要不可欠な材料です。これらを温和に分解、リサイクルする技術を確立することにより、持続可能な循環型社会に貢献します。

 

SDGsが世界的に提唱される中、これに関連した研究をしたいという思いは以前からあった一方、私のこれまでの研究は基礎的な光化学に関するものであり、どのように展開するかを考えあぐねていました。あるとき、紫外線の光を当てるときわめて強い還元材を生成する化合物をふと発見しました。こんなにも強い還元剤を光で作り出せるのであれば、難分解性の化合物も光で温和に分解できるのではないかと考え、本テーマを着想しました。

 

テフロンやナフィオンなど、社会で広く活用され、かつ極めて強靭なフッ素樹脂を可視光で温和に分解できる新材料および技術を創出します。そして、企業などとの積極的な連携を通じて、フッ素樹脂の温和なリサイクルシステムを実現したいです。

 

数十種類の光反応を一度に評価できるハイスループット光反応解析技術の確立、そして統計解析や人工知能(AI)技術を活用した新材料探索を初めの数年で行い、基盤となる技術、材料を確立します。それと並行して、フッ素材料をよく取り扱う企業と積極的に連携し、実用フッ素樹脂の光分解反応の検討や大スケール化をすすめます。法律や政策に関わる文系学部の先生方や自治体とも連携し、最終的に実社会の廃棄物処理技術へと発展させたいです。

 

本研究は、新材料、新分析技術を用いて豊かな生活を支えるフッ素の資源循環の実現を目指すものなので、持続可能な循環型社会にむけて直接的に貢献できると考えます。また、このような社会的に重要度の高く且つ困難な課題に大学研究室の学生とともに取り組むことにより、問題解決能力と社会問題や環境に関する意識の高い次世代の社会を担う人材の育成にも貢献できると考えます。

 

―― パートナーシップについて
材料開発においてはAIを用いた解析に詳しい情報科学者の方、分解反応においては実用フッ素材料を製造しておられる企業の方、また環境科学関連分野の方と積極的に連携したいと考えています。

 

―― 研究連携で大切にしていること
自分の専門分野をできる限りわかりやすい言葉で丁寧に説明し、自分の考えの意図やビジョンを共有できるよう心がけています。また、学ぶこと、知ることの楽しみや、研究が発展することの喜びを共感できるような人間関係の構築にも努めていきたいと思います。

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