赤間 亮
RARAフェロー
世界に先駆けたデジタル・パブリック
ヒューマニティーズ研究空間(ARCーRS)の
実現と運用
SCROLL
1983年都留文科大学卒業、1985年早稲田大学文学研究科修士課程修了、1991年早稲田大学文学研究科博士後期課程単位取得退学。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館助手を経て、1991年より立命館大学文学部専任講師。1998年立命館大学アート・リサーチセンターの設立を主導し、デジタルアーカイブ技術と日本芸術文化研究を融合したデジタル・ヒューマニティズ型研究を確立、推進してきた。2002年からは、海外に拡散した日本の美術品・文化財のデジタルアーカイブプロジェクトを開始し、その手法は、ARCデジタルアーカイブモデルとして海外でも知られている。
だれもが日本の芸術・文化にアクセスし研究できる豊かな世界を、メタバースにつくる
日本の文化芸術研究のための基礎的デジタル研究環境を構築してきました。この環境に生成AIを応用的に取り込み、アーカイブを知的生産活動に効果的に機能させることを目指しています。また、国内の文化資源デジタル化にも注力した上で、文化資源を活用した地域連携を促進するため、メタバースに次世代研究環境の可能性を追求し、パブリック・ヒューマニティーズとデジタル・ヒューマニティーズ(DH)を連結したデジタル・パブリックヒューマニティーズ(DPH)を推進していきます。
芸術・文化は直接「命」や「利益」に繋がらない分野のため、後回しにされがちです。しかし、この分野は人間の心を豊かにする分野であるため、パブリック・ヒューマニティーズの考え方に即していえば、一人ひとりがまんべんなくアクセスし芸術・文化を容易に享受できるデジタル環境を構築することは、結果的に人々の豊かさに繋がるものと考えています。そのためには、芸術・文化とパブリックの間の敷居を取り除く環境作りが必要であると思います。
日本の芸術作品や文化資源は世界に拡散し続けています。いわば“文化大使”の役割を担って、繊細で創造性が豊かな日本のイメージを形成しています。一方、国内では、地域に密着した儀礼や習俗、祭や民俗行事があり、日本人の心意が表象されています。国内から離れ日本イメージを形づくる文化資源と、国内で時間とともに変質し、消えていくであろう文化資源とが、境目がなく渾然として共存するリサーチワールドを成立させることを目標としています。
アート・リサーチセンターで稼働するARCリサーチスペース(ARC-RS)は、DBシステムをバックグランドに置いたDAシステムであり、研究活動の中で成長する仕組みです。ARC-RSに生成AIをどのように組み込むかが、RARAフェロー就任初年度の大きな課題です。初年度中には、メタバースのプラットフォームを検討し、実験的な括用を開始しますが、本格的な稼働は、2025年度以降となる予定です。一方で、地道なデジタルアーカイブは国内外で滞りなく実施し、コンソーシアムに参加する組織の数を増やしたいと思います。
学問基盤は「方法の学問」としてのDHです。本研究では、人文学の革新する駆動力としてDPHの実現を掲げていますが、それはデジタルテクノロジーを駆使・応用して、人文知を大学から社会に開放する営みであり、人文学の教育モデルを激変させる可能性があります。この動きを先導し、次世代の人文学分野での大学教育・研究のあり方を、研究の進捗と並行して提示することで、他大学に先駆けて次世代大学を構想できると考えています。
―― パートナーシップについて
大英博物館やシカゴ美術館、メトロポリタン美術館など、世界の著名な美術館や博物館とのコラボレーションを実現してきました。本研究では、こうした世界の文化・芸術分野との個々の連携からさらに拡張して、日本文化芸術のデジタルアーカイブ基盤を共有するコンソーシアムの設立を目指しています。国内では、むしろ地域連携を強化するため、まずは京都市・京都府とのパートナーシップを強化して足もとを固める計画です。
―― 研究連携で大切にしていること
パートナーとなる組織が抱える課題を、先方の立場に立って理解し、そこに本研究がコミットすることにより、何が貢献できて、何が貢献できないのかを明確にすることに努めています。その貢献が、パートナーの側のニーズのどの位置付になるのかをよく理解できるよう、コミュニケーションを深めていくことを心掛けています。また、複数パートナーによる集団協働体制については、目的が曖昧にならないよう、適切な組織の大きさを見極めることを大切にしています。