布山 美慕

RARAアソシエイトフェロー

文学・芸術の理解における「不定性」を持つ認知状態の探求

文学・芸術の理解における「不定性」を持つ認知状態の探求

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FELLOW PROFILE

2006年京都大学理学部卒業。2008年京都大学大学院理学研究科物理学修士課程修了。
民間企業のコンサルタントや研究開発を経て、2013年大阪大学大学院文学研究科修了。
2016年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学、博士(学術)。
玉川大学、北陸先端科学技術大学院大学での研究員、早稲田大学講師を経て、2022年より立命館大学文学部准教授。専門は認知科学。

文学・芸術における不定な認知状態とその効果:不定性の可能性探求と展開

文学や芸術の分野では不確定な理解の状態が創造性や美的体験の基盤になりうると指摘されてきました。私の研究では、文学や芸術の理解における「不定性」を持つ認知状態を、量子確率論を用いてモデル化し、その現実感や情動状態への効果とともに、科学的に説明、予測、制御することを目的とします。学際的共同研究者とともに研究を推進します。不定性の価値を実証的に検証し、新たな人間観や文化・社会の可能性の創出を目指します。

 

揺れ動き定まらないことは本来とても魅力的で、文学や芸術において多様に扱われてきました。一方で、近年はできるだけ早く約束された価値を手に入れる、たとえばすぐに検索し“答え”を知ろうとする、コスパ・タイパを重視する価値観が中心となり、不定性の価値は見失われつつあるように思います。不定性をネガティブなものとして捉えるのではなく、その魅惑的な価値や可能性を科学的に示したいと考え、本研究テーマを選びました。

 

今後のビジョンとして、「不定性の価値」を中心に据え、その価値の基盤となる認知について、自然科学と人文学を横断する多様な研究者・研究方法によって探究・発信します。この研究と発信によって、多様な学術・文化的背景を持つ研究者を引き込み・繋げ(志)、創発的研究が可能となる場を創生し(共創)、不定性へのネガティブな価値観を反転し(変革)、これらの学術的・社会的発信によって本学の信頼性も上げたい(信頼)、と考えています。

 

そのため今後数年間は、CREST研究「量子的認知状態の遷移とその効果:不定性の価値と制御」を中心として進めます。重点目標として「量子的認知状態を惹起する外部刺激とその効果の対応づけ」、「量子認知状態の観測手法確立、認知状態の遷移・観測の量子確率論によるモデル化(CREST他グループ成果総合)」、「不定性の価値の学術界・社会への発信」を据えます。主に、前半二年半でごく短時間の不定な認知状態を、後半二年半で時系列の不定な認知状態を扱います。

 

人文学の研究によって、不定性は創造性の基盤ともなりうることが指摘されてきました。本研究は、既定路線や予測可能な発展にとどまるのではなく、未知で不確実な環境にもポジティブに対応し、新たな価値を生み出す学術・文化・社会活動の科学的基盤になりうると考えています。

 

―― パートナーシップについて
不定性の価値について興味をもたれる、人文学・社会学・自然科学など多様な分野の研究者をイメージしています。また、文学や芸術の不定性の情報学的な特徴量を扱いうる人工知能分野にも興味があります。この点、古典確率ではなく、量子確率論を用いた意味空間モデルの探索も進めています。以上のパートナーについて本大学内外・国内外で少しずつ関係を持っていきたいと考えています。

 

―― 研究連携で大切にしていること
多様性を活かすため、互いの価値観を尊重し、心理的安全性が確保された環境、土日祝日・夜を休みにした健全な研究環境を重要視します。また、私には「私自身が実験や分析のプレーヤーとして研究を進めることによって研究を深く考えられる」という理念があります。そのため、協働や総括のオーガナイズのみでエフォートが終わらないように、自分自身のプレーヤーとしての自由な研究時間の確保を大切にしたいと考えます。

 

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