佐伯 和人

RARAフェロー

人類の月や火星進出を推進する月の水資源探査研究

人類の月や火星進出を推進する月の水資源探査研究

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FELLOW PROFILE

1995年、東京大学大学院理学系研究科鉱物学教室で博士(理学)取得。
ブレーズパスカル大学(フランス)研究員、秋田大学 助手・講師、大阪大学 准教授を経て、立命館大学総合科学技術研究機構 教授(現職)。
JAXA月探査「かぐや」計画をはじめとする複数の月探査プロジェクトに参加。月の科学に関する著書が複数あり、 『月はぼくらの宇宙港』(新日本出版社)は2017年度の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(中学校の部)に選定。

月の水資源観測機器を開発、月の氷鉱山で「宇宙資源学」を創出し、

人類の太陽系進出をサポートする

人類史上初めての商用宇宙資源となる月の極域の水資源の探査と採掘がまもなく始まります。 この水資源の探査を行い、水分子蓄積メカニズム解明をすることを皮切りに「宇宙資源学」を創出し、人類の月・火星進出を強力にサポートしたいと考えています。

 

今、人類は大航海時代と産業革命が同時に起きるような人類史上の大転換期にいます。 かつての産業革命を推進した資源は、鉄鉱石、石灰岩、石炭の三種の岩石でした。 今日の宇宙大航海時代の鍵となる資源は月の極域にある水の氷です。この氷をロケット燃料に転換することで、人類の太陽系進出が加速します。 水の起源や移動・濃集メカニズムの解明は、太陽系の天体での生命の起源を解明することにもつながります。

 

鉱山開発は地質学を産み出し、そこで発見された化石世界の研究から進化論も産まれました。 私は日本の鉱山で地質学を勉強させてもらいましたが、月の氷鉱山フィールドで、人類が新たな知や価値観を得ることを、 「宇宙資源学」を創出することにより手助けできれば幸いです。また、月の水資源を核として太陽系の国際地図が作り始められる時に、 日本が平和な宇宙秩序をつくるリーダーとなれるよう、宇宙資源学でサポートしたいと考えています。

 

2023年度には月着陸実証機SLIM計画が月面へのピンポイント着陸技術を実証し、 2024年度以降に月極域探査機LUPEX計画によって月の極域での水資源探査が始まります。 私はその両方に観測機器の開発・運用で参加しているので、月探査の最新データを取得しつつ、水資源の濃集メカニズムを解明する室内実験を併行して行います。 そして最先端のデータを取得している優位性を活用して宇宙資源学の研究グループを組織したいと考えています。

 

かつての石油開発ではセブンシスターズが世界経済を動かし、その裏で多国籍企業シュルンベルジェが世界の油田を科学探査して開発の動向を左右しました。 月の水資源は人類が生活の場を太陽系に拡げる時代の鍵を握る地下資源です。この資源開発に係わる分野は、無人・有人月探査、燃料製造プラント建設、 宇宙資源商用化の法整備、宇宙資源の経済学、など、多様です。かつて鉱山には様々な分野の知恵が結集されました。宇宙の鉱山も同じです。

 

―― パートナーシップについて
地球の資源開発の技術を宇宙に転用するというのは、私にとっても初めての試みです。 地球の自然を相手に観測や採掘をしている方々のノウハウを勉強させていただきたいし、地球での活動を月や火星に転用したいと考えている研究者や企業の方々とは、 ともにその方法を開発できればと思います。また宇宙という極限環境での観測をするノウハウは、地球の極限環境での観測に役に立つとも考えています。

 

―― 研究連携で大切にしていること
人跡未踏の地、人跡未踏の分野に挑むフロンティアスピリッツを共有できる方が良いですね。それぞれの専門分野でたがいに刺激しあい、 楽しい興奮の中で協働作業を行えたら最高です。また、単なる知識の交換ではなく、何らかの成果となる物や事がつくられる具体的な目標、 失敗か成功かが明確に定義できるような緊張感のある目標設定が、協働作業を成功させるために重要だと考えています。

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