三原 久明
RARAフェロー
微生物の「代謝」の多様性と機能の解明
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1993年京都府立大学農学部卒業、1995年京都大学大学院農学研究科修士課程修了、1999年同研究科博士後期課程研究指導認定退学。
同年博士(農学)取得。同大学化学研究所非常勤研究員 (1999)、同助手 (2000)、同助教 (2007)、立命館大学生命科学部准教授 (2009) を経て、2014年より同教授(現職)。
日本微量元素学会理事、日本微量栄養素学会理事、国際学術雑誌2誌のEditor。
「地球環境の未来予測」と「気候変動の制御」の鍵となる微生物代謝機能の開拓
微生物は地球環境や生態系に極めて大きなインパクトを与えています。微生物の代謝活性を理解することは、将来の気候変動予測モデルを精緻にし、気候変動に対処するために極めて重要です。本研究では、微生物の根幹機能である「代謝」を基軸とした物質循環に着目し、微生物代謝の多様性と機能の解明に挑み、気候変動に対する微生物応答の理解を躍進させ、微生物の代謝活性を制御する手段を追求します。
地球上の全ての生物は微生物と共生しており、ヒトの場合、自身の細胞数を上回る数の微生物と共に暮らすことで健康を維持しています。微生物は有用物質を作り、微生物電池として機能し、環境汚染物資の除去にも利用されます。しかし人類は、地球上の微生物のうちごく一部しか利用しておらず、99.98%は未開拓です。微生物がもつ潜在的能力は計り知れず、その応用開発が今後の人類の存続の鍵であると考えています。
微生物の新たな代謝機能や生産物質を開拓し、食料問題、エネルギー問題、資源問題、環境保全、ヒトの健康、生態系維持、生物多様性保全など、幅広い分野の課題解決に繋げることを目指したいと考えています。そのためには、未だ私達が知らない微生物を探索し、その性質を明らかにすることが重要です。
今後数年間で、次の3つの研究に取り組みたいと考えています。
1.地球冷却に寄与する硫化ジメチル生成細菌の解析
2.バイオガス生産に寄与するメタン生成菌の遺伝子組換え系の構築と応用
3.新奇微生物の発掘と気候変動が細菌代謝に与える影響の定量的遺伝子変動解析
これらの研究が進展すれば、微生物代謝制御により、微生物が生産するガスの放出・吸収コントロールに繋がる可能性があります。
次世代の大学や社会にとって本研究が寄与できると考える分野・領域について、地球環境の未来予測や気候変動緩和などが第一義的に考えられる領域ですが、微生物の代謝研究はこれにとどまるものではありません。アイデアや連携次第で、例えば、太陽電池材料の再資源化、環境保全、電池デバイス改良、環境調和型農薬・肥料の開発、惑星開発、ヒトの栄養補助剤開発、人類と微生物の文化人類学的理解など、多岐に渡る分野・領域に寄与できると思います。
―― パートナーシップについて
他のRARAフェロー・アソシエイトフェローには、様々なご専門の研究者がおられます。例えば、構造生物学、気候変動、極端気象、惑星科学、太陽電池、化学物質変換、電池デバイス、人類学、脳栄養学、環境保全などの研究者と微生物を介して異分野シナジー連携ができれば、面白い研究に発展するのではないかと思っています。
―― 研究連携で大切にしていること
ほとんどの微生物が未開拓であることを考えれば、これから益々面白いことが発見され、様々な領域と繋がっていくのだと思っています。したがって、様々な分野の研究者と連携することが必須です。既存の枠に囚われずに自由な発想で楽しく協働できることが大事ではないでしょうか。