松村 浩由
RARAアソシエイトフェロー
分子界面制御による生命機能科学
SCROLL
1995年大阪大学工学部卒業、2000年同大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。
大阪大学大学院 工学研究科助手、日本学術振興会 海外特別研究員(イギリス・ケンブリッジ大学)、大阪大学大学院 工学研究科准教授を経て、2015年より立命館大学 生命科学部 教授(現職)。
2005年より現在に至るまで、株式会社創晶顧問(技術)を務める。
未来の人類のため、地球環境改善のために何ができるか―「分子界面制御」という新しい生命科学への挑戦―
最近、酵素・タンパク質の機能部位から離れた分子界面の変化が新機能を発揮する現象を見つけました(Commun Biol 2021; Mol Plant 2020)。さらに人工タンパク質を結合させて分子界面を作ると、酵素の機能が変わったり、クライオ電子顕微鏡で通常見えない小さな分子を観察できたりすることも分かってきました。本研究では、分子界面制御によって「新しい酵素、生物、薬、デバイス、技術」を作ることを目指しています。
長年、光合成で二酸化炭素CO2を固定する酵素を研究テーマにしてきたのですが、最近、CO2固定酵素Rubiscoの酵素本体でない部分の入れ替え「サブユニットスワップ」によって触媒速度が上昇し、さらにその酵素を発現したイネが高い光合成活性を示すことが分かりました。この研究が足がかりとなって、「分子界面制御」という新しい研究を進めています。
2050年には世界人口は97億人に達し、温暖化の影響懸念が高まる地球上において、人類を支えるだけの食、エネルギーをいかに持続的に供給していくか、温暖化によって蔓延する感染症をいかに抑えるかが、今後約半世紀の最大の難題です。これら50年後の地球環境科学の重要課題解決への基盤を作ることを目標としています。
そのためにも、分子界面制御によって「新しい酵素、生物、薬、デバイス、技術」を作る、共同研究網を拡大する、大学外へ積極的に学術発信していきたいと考えています。
「感染症等の医薬品創製」、「機能性食品開発」、「テーラーメイド医療」、「農薬開発」、「微生物によるバイオプロセッシング」まで、一般市民の生活に直結した分野をも含めた幅広い分野へ寄与できるのではないかと期待しています。
―― パートナーシップについて
産官学関係なく共同研究ができれば有り難いと思っています。タンパク質・酵素を作って扱う技術、人工タンパク質取得技術、結晶化・X線構造解析技術、クライオ電子顕微鏡技術など様々な技術を扱っていますので、主には大学・製薬・食品業界の方々とパートナーシップを組ませてもらえればと思っています。
―― 研究連携で大切にしていること
国内外を問わず協働していくためには、お互いが気持ちよく進められる関係づくりが大事だと思っています。お互いが言いたいことが言える関係、つまり普通のコミュニケーションができるかどうかが重要だと思っています。