山末 英嗣
RARAフェロー
「資源パラドックス問題」の解消
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2000年3月 東京工業大学理工学研究科金属工学専攻 博士後期課程修了。博士(工学)。
京都大学京都大学大学院エネルギー科学研究科寄附講座職員、助手、助教。
ウィーン工科大学客員研究員、国立環境研究所客員研究員を経て、2016年より立命館大学理工学部機械工学科准教授、2019年4月より同教授。
資源パラドックス問題の解決を通じた持続可能な社会の構築
脱炭素を目指す中で、グリーンイノベーションが逆に資源消費を増やす「資源パラドックス問題」が生じています。この問題を解消するためには、ライフサイクルな視点から個々の製品の価値を最大化する社会システムの構築が必要です。本研究では、問題を引き起こす製品を特定し、技術、社会システム、政策パッケージを通じて対策を提案すると共にライフサイクルトレーサビリティの概念も組み込むことでサプライチェーンリスクといった問題にも対応します。
私が研究者としてのキャリアをはじめた頃、ほとんどの研究者が地球温暖化対策に注力しており、それは現在も続いています。しかし、ライフサイクル思考で考えると多くの脱炭素技術がその背後で「資源」を多く消費することに気づきました。つまり、真の意味での持続可能な社会を考えるためには、ライフサイクルな視点から脱炭素と資源問題の両方を解決する必要があると感じ、本研究に取り組んでいます。
今後RARAフェローとして、立命館大学の国際的な研究力を示すため、自然科学と社会科学が融合した新しい研究領域に挑戦します。本研究は環境問題やサプライチェーンリスク、ライフサイクルトレーサビリティの解決策になり得ると考えます。既にSIPといった大型研究費を獲得していますが、そこで構築したコンソーシアムを軸に高インパクトの論文発表を目指し、学際的な研究拠点と人材育成を目指します。
今後のロードマップとして、RARAフェロー就任初年度から2年目にかけて、資源パラドックス問題の解決に向けた基礎手法論の開発(マイクロ波メタラジー構築、スクラップソーティング技術、TMRデータベース構築、政策デザイン)に集中します。3年目から4年目はこれらの手法を応用研究に移行し、消費者行動変容を促す技術開発に拡大したいと考えます。5年目以降はサプライチェーンリスクを議論するプラットフォームを構築し、教育パッケージも含めた全ステークホルダーへのアプローチを展開していきます。
次世代の大学・社会にとって、本研究は学際的なアプローチを取り入れた教育を通じて次世代のリーダーや専門家を育成すること、国内外の政策立案者に対して資源パラドックスに関する意識を高めること、 LCAを活用して製品情報の透明性を向上すること、国際的な資源管理と公正な資源分配に関する議論をリードすること、地域コミュニティと協働し持続可能な生活様式やビジネスプラクティスの促進に寄与できると考えています。
―― パートナーシップについて
本研究は、まず幅広い分野の教育機関との連携を深めることが重要と考えています。同時に、環境に配慮した製品開発を行う企業、資源管理に関する政策を担う政府機関、地球環境を守るNGO/NPOとのパートナーシップも必要不可欠だと思います。これは大きな団体・自治体に限らず、小さな地域コミュニティとの協働を通じることも大事で、例えば持続可能な里山管理に関するステークホルダーも重要なパートナーです。
―― 研究連携で大切にしていること
本研究は学際的かつ国際的なものです。そのため学術協力においては、共同研究の枠組み内で各研究機関の独自の専門性を活かし、研究目標達成に向けた具体的な役割分担と責任範囲を詳細に策定することが重要と考えています。異文化間での協働であることが多いことから、双方向性を重んじたコミュニケーションを確立し、定期的な成果と課題の共有を通じて信頼構築を図ることも必要と感じています。
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